ALBUM REVIEW



ストレイテナー

TITLE  LOST WORLD'S ANTHOLOGY
Released  2004.1.21
SINGLES  「TRAVELING GARGOYLE」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 苦節5年余り、悲願の(?)メジャー1stフルアルバム。
 えぇと、まず第一に「ROCK END ROLL」の後にこの作品を聴いてみた叶月としては、全体と
して演奏に弱冠の単調さが感じられます。元々ギター+ドラムというシンプル極まりない構成
出発したバンドだけに、気のきいた小細工は抜きの大胆なアレンジが醍醐味の彼らではある
ものの、後追いで聴くとコード(和音)演奏主体のギターがどことなく起伏に乏しいというか… 
ドラムの音もちょっと軽めの印象を受ける。
 次にアレンジの点。1・2・4・7・8番のビートはぶっちゃけ一緒だろう(^^;)これだけ同じテン
ポの曲を聴かされていては、熱心なファンでもない人は食傷気味になる危険性も少なからず。
この点がアルバム全体としてのバリエーションに欠ける致命打であることは言及せざるを得な
いでしょう。
 さてこの作品、短所ばかりのアルバムというワケではもちろんなく、長所もあります。何より
収録されている楽曲のメロディーがキャッチーで、耳に残りやすい。特に先行シングルとなった
TRAVELING GARGOYLE」はこのテのサウンド好きなリスナーにはたまらない名曲!イントロ
からハンパなくカッコいいです。余談ですがサビの「♪TRAVELING GARGOYLE ANDY」の部
分、歌詞を見るまで「♪TRAVELING GARGOYLEなんでい〜」と聞こえてしまい(無論本気で
そういう歌詞だと信じ込んでたなんてことはないですが)、「粋だねぇ…w」などとほくそえんで
いたのはここだけの話です(阿呆)
 つまりこの作品、曲ごとに切り取ってみれば魅力的な楽曲ではあるけれど、それらを並べて
みると演奏・アレンジ面において一本調子であることがわかってしまう難点ももつアルバム、と
いったところです。下積みの長いバンドにも関わらず、このアルバムから「ROCK END ROLL」
までの期間における演出力の変化というものを、ありありととは言わずとも感じた次第であり
ます。「崩壊〜」から「未来の破片」にかけてのアジカンしかり、やっぱメジャーに出ると違うモ
ンなんですかねぇ…?色々と触発されたりするんでしょーか。や、これは「ROCK〜」以降の彼
らの成長を本旨に据えての肯定的見方ですよ、あくまで。(2005/3/26)
TITLE  ROCK END ROLL 
Released  2004.6.23
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 メロディックな歌・叙情的な歌詞を、ゴリッゴリのエレキギターに乗せたタイトな演奏が十八番
のストレイテナー。現代ロック好きっ子の叶月にとって、このサウンドがアンテナに引っかかる
のはある意味必然的でした。叶月が初めて耳にしたストレイテナー曲はメジャー1stシングル
TRAVELING GARGOYLE」だったのですが、実際に初めての接点となったのはこのアルバム
に収められている「REMINDER」だったのでした。
個人的にはこのミニアルバム、ならびにその1曲目に含まれている「REMINDER」が、ストレイ
テナーというバンドがメジャーシーンに浸透するきっかけとなったのではないかと思ってます。
 基本的にこのバンドはどの楽曲もゴリゴリギターナンバーなので、何らかのアイデアで曲の
バリエーションを分けるのがこのバンドの常なる課題。その視点で見ると、「POSTMODERN
では面白いビートを刻んでるし、「GUNSHIPRIDER」では何やらラップっぽいことをしていてこれ
も面白い。ちょっとこの時点ではムリヤリリリックを詰め込んでるけど、これがこの後スキルア
ップしたらかなりサマになる気がする。
収録曲は全5曲とミニアルバムとしても少なめで、今の時代ヘタするとシングルでもありがちな
曲数ですが、ヘタに曲数増やすよりはバラエティーに富んだ曲を少数収録したミニアルバムの
方が充足感は大きいと思う。アルバムってのは収録されている1曲1曲の魅力はもちろんのこ
ながら、アルバム1枚全体としての聴きやすさも価値尺度のひとつだし。
 ただ、根幹的演奏はギター+ベース+ドラムのシンプル構造で、曲ごとのアレンジに大胆な
変化がないので、これからもバラエティーに富んだ楽曲をコンスタントに作り続けていけるのか
という一抹の不安もよぎる(^^; でもまぁ、このアルバムの段階では唯一無二のセンスが存
分に発揮された斬新な音です。とりあえず「REMINDER」は名曲であると改めて強調。メロディ
ックロックの決定版と言っても過言でなし。(2005/3/8)
TITLE  TITLE
Released  2005.1.26
SINGLES  「TENDER」「KILLER TUNE」「PLAY THE STAR GUITAR」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 TITLEが「TITLE」ってのも↑のように表記してみるとやっぱ面白い、と突っ込まずには…(笑
オリコン週間アルバムランキングでは自己最高の23位を記録したメジャー2ndフルアルバム。
長年に渡るインディーズ潜伏期から2003年にメジャーデビューし、以降着実に布石を積む彼ら
だけに、リリースごとに上位にのし上がっていくチャートの動きもうなづかされるというもの。
 序盤の「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」「PLAY THE STAR GUITAR」「泳ぐ鳥」といったテナ
ーらしいカオティックなナンバーもあれば、「フライパンで弾けるポップコーン」やら「トースターを
飛び出したパンまで
」やら、歌詞からもエラいポップなことになってることが伺える「AMAZING
STORIES
」のような曲も。邦楽ロックアルバムによく見られる傾向で、始めはエネルギッシュだ
ったり疾走感あったりの楽曲を持ってきて、後半になるにつれてクールダウン、という構成はこ
のアルバムにも当てはまるのだが、前作でもおなじみ「REMINDER」やシングル曲「KILLER
TUNE
」といった骨太楽曲が後半部分の引きしめになっている。
 ただ、ところどころ感じられる多少のデジャヴ感は否めなかったというのもあります。前作の
ようなミニアルバムに比べて曲数が多い分、それぞれの楽曲の多様性は薄れたかな?しか
し、重厚なサウンドが持ち味のテナーなので、このアルバムもボリューム感は折り紙つき。下
積みも長いバンドだけに演奏面ではまずがっかりさせません。ロック音楽好き傾向にある人は
とりあえず一度は聴いてみることをお薦めしたい。いよいよメジャーシーンに乗り出したストレイ
テナーの、生きたロックがここにありますから。
 名曲「REMINDER」は前のミニアルバムで触れているのでここではおいといて、ありふれた
テナー節に三拍子と四拍子の組み合わせという絶妙なヒネりを加えた「PLAY THE STAR
GUITAR
」、ドラムとベースが繰り出すイントロがカッコいい「泳ぐ鳥」辺りがお気に入りです。
あとラストの遊び心炸裂「KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]」も。シングル曲をア
ルバムではリミックスしてしまう、というのは基本的にいただけないんですが、こういうのも面
白いかな〜と率直に…こっちの方がキラーチューンという感じはするし(笑)。(2005/3/9)
TITLE  EARLY YEARS 
Released  2005.4.13
SINGLES  -
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 インディーズ時代のアルバム「STRAIGHTEN IT UP」「ERROR」「SKELTONIZED」の3枚に加
え、the PeteBestとのスプリット盤「DRAGORUM」からの一曲「MOUNT」を収録した、タイトル
通りの初期ベストアルバム。まさしく、ストレイテナーにハマり出しのリスナーには垂涎の一枚
と言えようが、当時からのファンにとっては心底「(゚д゚)ハァ?」な作品であろう。だって、過去作3枚
合わせて5000円以上するものを、+αのついた今作でその半額だもんよ…(^^;
 そこそこのテナー好きを自称する叶月でしたが、お恥ずかしいことにインディーズ盤には手を
出していなかったので、今回のベストの発売はやっぱり嬉しかったワケで。現在のテナーサウ
ンドの片鱗を垣間見るべく早速聴いてみたところ…インディーズ時代の音は所詮メジャー以降
とは比べるべくもない、との見解だった自分、いろんな意味でド肝を抜かれてしまいました。
 まず、メロディーがポップ・キャッチー・メロディアス!時に激しく、時に切なく流れる旋律は基
本的には今と変わらないものの、当時の彼らからは泉の如くグッドメロディーが湧き出てやま
なかったのではないか、という想像が否応なしに働く。もちろんメジャー以降の作品も逸品で
あることは言うまでもなく、噛めば噛むほど的な曲はメジャー以降に多いのも事実だが、インデ
ィーズ期の楽曲からは「まだまだ名曲を生み出せるぜ」という将来的な余裕を感じる。
 次に、スタイルの変化…と言ってよいのだろうか?冒頭では「おっ、健全なるテナーワールド
だな」程度の印象なのだけれど、後半になるにしたがってホリエ氏のボーカルがどんどんバイ
オレントな方向へと向かっていく。「音楽で心の歪みを真っ直ぐに」をコンセプトに掲げる彼らだ
が、この頃の彼ら自体に心の歪みがあるんじゃないかという余計な心配をしてしまう(ぉぃ)。
EAGLE SHARK PANTHER」や「UNDER ATTACK」、PEALOUT辺りを彷彿とさせるラストナン
バー「YES, SIR」まで来ると「いつものママじゃなぁ〜い!!」という気分にすらなってしまったが
(爆)、これはこれでまた何ともいい味を出しているのだから捨て置けたモノではない。
 それから今作、インディーズ音源であると同時に「ベースレス時代」の音源でもあるワケだが
… 装飾音の類いは除き、これって本当にギターとドラムだけの構成?一部の曲は明らかに
ベースと思われるそれが入っているようにも聴こえるんだけど… 別にベースが入ってたから
って裏切られた気分になるモンでもないのだけど、ちょっと気になったんで一言。
 というワケでこの初期ベスト、予想を大きく反する世界があってなかなかに新鮮でした。で、
ベースも加わり、さらにバンドサウンドの強化された今、インディーズ時代の楽曲を再録した
メイクアルバム
出してみるのも面白いんじゃないかなあ。これだけ元がいい楽曲揃いなのだ
から、ぜひともよりタイトになった演奏で聴いてみたい。今すぐじゃなくてもいいので、熱望する
次第であります。(2005/5/6)
TITLE  Dear Deadman 
Released  2006.3.8
SINGLES  「The Remains」「Melodic Storm」
Evaluation  ★★★★★★★★★☆
 これまでの作品に比べると、色々な意味でかなりポジティブな要素の強くなったアルバムだ
と思う。3ピースバンドという形態による音のつくりは以前とほとんど変わっていないし、以前か
らカオティックな中にもポジティブな歌詞を乗せた歌は少なからずあったのだが、今作ではこれ
までに表現してきた退廃的な世界観を踏襲しつつも、どことなく「酸いも甘いもかみ分けたスト
レイテナー」としての一面を垣間見ることができるのである。
 サウンドしかり歌詞しかり、これまでのカオティックな要素を基調としていたテナーのそれと
は一線を画す仕上がりである。「優しさ」とか「希望」とか、そういった単語が思い浮かぶ。前作
「TITLE」では「AMAZING STORIES」や「EVERGREEN」といった曲でそれらの表現を試みてい
たが、まだアルバム内では異色作という印象だったのに対し今作ではそういった曲がしっかり
大成されており、アルバムの中核として成り立っている。
 サビのファルセットが切ない余韻を残す冒頭の「The Novemberist」から、今までとは違った
カラーを感じさせる。音符を青、コードを緑に例えた描写がいかにもテナーらしい「Blue Sinks
In Green
」も目に浮かぶ情景が鮮やか。続く「Dead Head Beat」「Sad Code」はアルバム中で
も最も従来のテナー像寄り?なのだが、マイナーなサウンドがこのアルバムにおいてはむしろ
異色なように思えるのがこのアルバムの特色を逆説的に物語っている。「The Nowarist」はメ
ロディー・歌詞ともにまるで朝焼けのようなものを喚起する希望溢れるイメージが印象的。2分
ちょっとで潔く終わるのも良し。「Tornado Surfer」は「走る岩」に続く歌謡曲リスペクトソング?
最初は浮いてる気がしないでもなかったが、何度か聴いてるうちになじんできました。そして
迎える「Discography」がこれまた名曲!従来のテナーにはおよそ見られなかったディスコテッ
クな一面が顔を出す。シメは「Farewell Dear Deadman」で憂いを残しつつ終わる。前作の
「EVERGREEN」の延長線上の曲といった感じで、この曲もまたアルバムの作風を代表する一
曲。シングル曲2曲も無論秀作です。
 このアルバムが出た今だから言ってしまうが、メジャーに移行してからの彼らは演奏はどん
どん上手くなっているものの、メロディーの良さはむしろインディーズ時代の方に譲るものがあ
ったと思う。しかし、今作をもって彼らはその点も見事にカバーしてみせた。ソングライティング・
演奏ともにバンドの熟を感じる傑作アルバム。(2007/6/8)
TITLE  リニア
Released  2007.3.7
SINGLES  「BERSERKER TUNE」「SIX DAY WONDER」「TRAIN」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 コンスタントにリリース続けてます。「Dear Deadman」からちょうど1年振り、通算4枚目のメジ
ャーフルアルバム。
 ポジティブ路線への移行を試みていると思われた前作(ならびに、前々作)だったが、今作は
退廃的で混沌とした従来のストレイテナーのイメージに回帰したような印象。作風としては1st
「LOST WORLD'S ANTHOLOGY」辺りに近いかな。しかし、ただ原点回帰するだけではなくて、
サウンド面では随所に試行錯誤を凝らしているさまが伺える。冒頭「CLARITY」では早速打ち
込みを使用しているし、「REST」では淡々と繰り返されるリズムを軸におどろおどろしいギター
リフやコーラスなど様々なアレンジが絡みつく異色の展開が見受けられる。続く「LIVES」に関し
てはまさかのポエトリーリーディングが導入されている。似たようなもので思いつくのはミニアル
バム「ROCK END ROLL」の「GUNSHIPRIDER」だが、あっちの「ラップに挑戦してみました」的な
気負いようよりもずっと肩の力の抜けた感じで、耳に入ってきやすい。「AFTER THE CALM」も
一聴すると磐石のテナー流疾走チューンだが、アウトロの「アフタ〜ザコ〜〜ム」のコーラスにド
キッとさせられる。かようにサウンドメイキングにおいて仕掛けの凝らされている今作である。作
品の雰囲気は従来の世界観を守りつつ、音作りの方に工夫のなされた今作は、音作りはその
ままに、作品の「色」を変えてみせた前作とで対照をなす一枚に仕上がっていると言える。
 しかし、ストレイテナーの最大の魅力は「メロディーの良さ」にあると考えている当方にとって
は、期待通りの作品だったと言い切るのは難しい。サウンドメイキングに力を入れた分、メロディ
ーのキレは落ちてしまった感がある。もちろん相対的に見て質が「悪い」というワケではないの
だが、「Dear Deadman」でインディーズ時代にもひけをとらないメロの良さを取り戻したことに喜
んだ叶月としては、少なからず物足りなさを覚えた一枚である。結果的に、個人的にはこれま
でのアルバムの中で一番曲ごとの印象が残りにくいアルバムとなってしまった。ハバの広さに
かけてはディスコグラフィーでも随一の作品であることに間違いはないのだが。このバラエティ
ーを維持しつつ前作のメロの水準まで持ち直すことができたなら、自分はそのアルバムをその
時点での「最高傑作」と呼びたい。(2008/2/21)
TITLE  Immortal
Released  2007.11.21
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 「ROCK END ROLL」以来、実に約3年半振りのミニアルバム。前作「リニア」からはわずか8ヶ
月のスパンでのリリースで、この年のストレイテナーはいつになく精力的です。
 これは「リニア」と比べると打ち込みなどの飛び道具的要素は控えめで、バンド感重視な作品
になってると思います。とはいっても、リズム隊などは相変わらず手数が多く凝ってて、試行錯
誤の跡が見受けられるなと。
で、これは「ROCK END ROLL」にも言えたことなんだけど、曲数が少ない分フルアルバムより
一曲一曲の印象が残りやすいですね。ミニアルバムの持つ皮肉とも言えるのだけど。でも、前
述の通り「リニア」よりストレートなバンドサウンドで勝負しているので、こっちの楽曲の方が本
来のテナーの魅力が伝わってくる気がします。しかし、「REMINDER」や「ROCKSTEADY」など代
表曲と呼ぶに足る名曲が収められていた「ROCK END ROLL」に比べると、コレ!といった曲が
なくやっぱりどうしても見劣りしてしまうミニアルバムではあります。
 ただ、ここに来てだいぶ3ピースひとつひとつの音が立って聞こえるようになってきたかもしれ
ない。以前の「音のカタマリがガツーンと来る」ような鳴り方よりも、ギター・ベース・ドラムの三
者が三者主張し合って、それぞれの音がとてもクリアに響いてくる気がします。特にドラム、音
の粒ひとつひとつに力強さがみなぎってて、気づけば耳を持ってかれます。ひょっとしたらテナ
ーは今「メロディックバンド」から「音重視のバンド」にシフトしてきているのかもしれないな、なん
て。だからこそ「SNOOZE」のようなインストをやる余裕も生まれてきたのではないだろうか。そう
いう観点では、今までとは違った楽しみ方ができるアルバムだと思います。(2008/2/21)
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