ALBUM REVIEW



SOUL'd OUT

TITLE  SOUL'd OUT
Released  2003.8.27
SINGLES  「ウェカピポ」「Flyte Tyme」「Dream Drive」「Shut Out」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 自分にとってのSOUL'd OUT、というかフロントマンのDiggy-MO'を三文字で表すなら、ズバリ
確信犯」だ。というのも彼は、バックグラウンドにShinnosukeという強力な後ろ盾を携え、自
身も秀逸なメロディーメイカーでありライマーでありながらも、そこから明らかに一歩引いたスタ
ンスでパフォーマンスをする「二枚目」だからだ。
このことを説明するいい例えとして、彼愛用(?)のライムに「ア アラララァ ア アァ!」という
フレーズがある。CDで聞き流す際にはどうってことないが、文字に表してみればこのフレーズ
、誰がどう見たってダサダサである(笑)しかし、このDiggy-MO'という男はそんなダサダサの
フレーズをあえて歌詞カードに明記する上、このアルバムの中ではインタールード曲(?)のタ
イトルに冠してさえいるのである。しかし、そんな彼のパフォーマンスこそが、間違いなく
SOUL'd OUTというユニットからヒップホップアーティストにありがちなとっつきにくさをいい感じ
に払拭し、加えてある種の愛嬌のようなものをもたらしている。それでいて、最終的にジャケ写
ではメンバー3人で二枚目気取ってパチリ、なのである。どうですか、この確信犯ぶり(笑)。
 でもって、SOUL'd OUTを形づくるもう一つの要素がDJ:ShinnosukeのBGM。DJという立場上
どうしてもMCの影に隠れがちな上、見るからに無感情そうな風貌から、その存在感はなかな
かに地味な彼ですが、言うまでもなく彼のハイセンスなバッキングトラックがこのユニットの華。
何よりこの部分こそが純然たる「音楽」だし、やっぱりラップばかりが優れてたって、BGMがし
っかりしてなきゃ寄るものも寄ってこないでしょ。
 一方、もう一人のMCであるBro.Hiなのだが…これが曲によってかなりムラがあって、中には
かなりゴリ押しのライミングで苦笑してしまうのも少なくないのだが、だからと言って彼なしの
S.O.というのもS.O.とは呼べなかったりする。「憎めない奴」とは、まさに彼のことだ!!
 そんな彼らの記念すべき1stアルバムがこの作品。デビュー曲「ウェカピポ」は後追いで聴く
と流れにあまりスムーズさが感じられず、まだまだ垢抜けない感じも残ってますが、それ以外
は今聴いてみても全く遜色ないです。個人的一押しをひとつ挙げると、ダントツで「See You @
Tha HOT SPOT
」ですねぇ。ていうかね、この曲にSOUL'd OUTの何たるか、が集約されてると
思うの。色っぽくリズミカルなラップで聴き手をほどよく酔わせた後、サビの「See You @ Tha
HOT SPOT♪
」でコケさせる、という手法(笑)で、結局コレが全体的にはカッコよくまとまって
るんだもんなぁ。いつ聴いてもニヤニヤしてしまう。名曲。他にも「SOUL'd OUT is Comin'
True to myself」辺り、イイ感じです。(2005/5/12)
TITLE  To All Tha Dreamers
Released  2005.2.2
SINGLES  「Love, Peace & Soul」「1,000,000 MONSTERS ATTACK」
 「Magenta Magenta」「BLUES」「To All Tha Dreamers」
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 皆さん、もう観ましたか?シングル「To All Tha Dreamers」のPV!
アニメ「焼きたて!ジャぱん」のED曲に抜擢されたこの曲では、Diggy-MO'氏の手から「Diggy
のホログラムが飛び出したり、PV後半では大仰な振り付けとともに波動砲のようなものをブッ
放したりと、とんでもないことになっております(笑)シュールアニメの決定版のタイアップ曲とし
て負けず劣らずの逸品です。
 さて、そんな波動砲を習得して帰って来たDiggy-MO'率いるSOUL'd OUTの待望の2ndアル
バム「To All Tha Dreamers」。前作からすでに感じられたダサカッコよさは影をひそめるどころ
かさらにパワーアップ!! 例えばアルバム曲に「ニタニタTHERAPY」(M-11)なんてタイトルをつ
けてしまうナンセンスさ、何より「1,000,000 MONSTERS ATTACK」の冒頭「アッ オゥ アッオ
ゥ …
」とか、ありえない(笑)。しかし、それも全てDiggy-MO'によるクレバーなギミックなので
ある。「『ニタニタTHERAPY』とか言って、サビで全然ニタニタしてないやん」と思ってしまった時
点で、あなたはすでにDiggy-MO'の手の上で踊らされているも同然なのだ!あな恐るべし。
 冗談はこの辺にしておいてこの作品、前作と比べると何と言いましょうか、見据える視野が
色々な点でよりワイドになった印象。アルバム冒頭の「Introduction:Message from...」では、
宇宙船に乗って宇宙空間へ飛び出すようなシーンを想像させ、中盤の「The Show」では楽曲
全体をひとつのショーに、MCの2人を司会役(多分)に見立てるという奇抜なアイデアを発揮。
コレはマジで臨場感たっぷりの代物で、あたかも自分がアリーナの観客席にいるかのような
錯覚に捕われます。舞台は言うなれば宇宙船の中でショーやら何やらを楽しみつつの宇宙旅
行、といった感じでしょうか。
 アルバム中のいくつかの曲でフューチャリングアーティストを起用しているということからも、
よりワイドなスタンスになったと感じられる所以。その中でもシンプルなBGMにDiggyの畳み掛
けるようなラップが延々続くM-7「Diggy Diggy Diggy Pt.V feat. DJ Mass」が特に素晴らしい。
パーカッションとラップだけでここまで聴かせる力を持つとはいやはや、圧巻です。
 シングル曲はどれも素晴らしく、アルバム中で一箇所に窮屈にまとめられることなくバランス
よく盛り込まれてあるので、全体としてダレない構成になってます。それでも全22曲(インター
ルード曲を除けば17〜8曲か)77分というボリュームだけに、通して聴くには少々濃厚すぎは
するものの、エンターテイナーとして格段に進歩をとげた彼らならではのアイデアが随所に凝ら
された、エンターテイメント作品として無類の作品と言えるでしょう。
 ところで、上でシングル曲はどれも素晴らしいと書きましたが、ちょうどいい機会だからひとつ
訂正しておきましょう。シングルレビューの方で酷評だった「BLUES」は実は素晴らしい作品で
あったと。すみません、より的確な感想をレビューに残せるよう精進します…(汗)(2005/5/20)
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