大阪発4ピースバンド、セカイイチのメジャー1stアルバム。
数多くある叙情系ギターバンドの中でも、このセカイイチはとりわけ何かしらの「情景」を聴く
者に描かせるのが上手いバンドだと感じた。1曲目から「夕景」とは名刺代わりのようなものか
。情景といってもただの情景ではなく、例えば原っぱだとか、1曲目に象徴されるような夕暮れ
だとか、そういった自然の風景。このように聴き手に情景を構築させることができるのは、ひと
えに詞の世界観や演出力が確固たるものであるからだと思う。メジャーデビュー作とはいえ、
バンドとしての熟練は素人らしからぬものだ。
かようにトータルでのクオリティーは高く、リスナーからの評価も高いこのアルバムだけど、
世間の評判ほどこのバンドに突出した何かを見出せないというのが実際のところである。確か
にいい曲を書くなぁ、とは思うけど、個人的には例えば「LOST IN TIMEをおとなしくした感じ」で
説明がついてしまいそうな気がする。あとちょっと、ゆったり目な曲が多すぎます。いくら曲が
よくても最初から最後までゆったりした調子だとさすがに通して聴くにはダルいです。そういう
意味では7曲目「井の中の世界」がいい感じにアルバムの引き締めになってるかな。この曲は
カッコいいです。ラストのバラード「ミソラ」もスローな曲だけど、だんだん高揚していく感じが感
動的。
十分な表現力は持ち合わせてるバンドだし、このアルバムの時点ではまだまだ「彼らならで
は」と呼ぶに値する何かを開拓する余地はあるんじゃないかと思う。見切りをつけるのは早計
かな、と思いました。(2006/11/2)
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