ALBUM REVIEW



レミオロメン

TITLE  朝顔
Released  2003.11.19
SINGLES  「雨上がり」「電話」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 ミニアルバムと先行シングルがいずれも好評、各音楽雑誌や有線・テレビ局では絶賛の嵐
の中にあったレミオロメン。そんな中、満を持してリリースされたこの1stフルアルバムは、既発
音源からの重複曲多数に、CCCDであることを無告知で発売されたことが原因で、何かと物議
をかもすことになってしまいました。
 とにかく彼らの1stシングル「雨上がり」は、発売された2003年5月の段階ですでに叶月にと
っての2003年度ベストシングル確定、と思えたほどの曲で。その後、この年のベストシングル
はアジカンの「未来の破片」にとってかわられるワケですが。こればかりは運が悪かった、レミ
オロメンよ(何)。
ベストシングル云々を抜きにしたって、雨上がりのあの土臭さや湿度、そして開放感を彼らな
らではの疾走感にまかせるまま届けてくれるこの曲は、今聴いても当時の高揚感を思い出さ
せてくれる。それと同時にレミオロメン自体もフェイバリットアーティスト決定、とは言わずとも叶
月の中で特別な思い入れのあるバンドになっていたのであります。
 そんな「雨上がり」を含むこのアルバムですが、レミオロメンというバンドの性格を知るには最
もおあつらえ向きなアルバムだと思います。既発音源からの重複曲が多くなっている分これま
での彼らの作品を総括するベスト盤的な内容になっているし。全体としての振幅は大きいとは
言えないけれど、単体で見ればこれ以降の作品にもひけをとらない楽曲が揃っているので、
初めてレミオロメンの作品に入るという人にはこれがベストなのでは。
 ただこの人たち、デビュー当初から「次世代型ロックバンド」だとか「ミスチル・スピッツ以来
の大型バンド
」だとか言われてきたけど、それはいくら何でも言い過ぎだろと思うところが当時
からあり… 特にこの縦文字系サウンドにタイトルはむしろ「次世代」とは真逆のベクトルのそ
れだろう。正直言って、誇張表現の極み。
振り返るに、デビュー期からメディアにあげあげにされてたり、レコード会社の方針次第でアル
バムの前評判が悪くなっちゃったりと、どうもこのバンドはバンドの主体性手前のところでバン
ドの評価を決定されがちなきらいがあります。オリジナリティーとしてすごくいいものもってるバ
ンドだけに、どうぞ周囲からの影響に左右されずにやっていただきたいものです。(2005/8/21)
TITLE  ether[エーテル]
Released  2005.3.9
SINGLES  「3月9日」「アカシア」「モラトリアム」「南風」
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 「アカシア」と「モラトリアム」との間で、謎のトップアーティスト入りを果たしたレミオロメンのメ
ジャー2ndアルバム。(ぇ 先行シングルにちなんで3月9日にリリースされ、さらにはこの日に
初の武道館公演も果たしたようです。
 「3月9日」以外はシングルとしてはいまいちインパクトが足りないなぁと思っていた叶月です
が、このアルバムは先行シングルの印象に反し素晴らしいものであるとの感想に至りました。
 一度聴いたらもう脳内にインプット完了、といった良メロ曲の数々は、1stにもましてグッとソン
グライティングの幅が広がってることを容易に伺わせます。「アカシア」以降のシングル曲もア
ルバム中では聴き劣りすることなく聴けます。特にこのアルバム、中盤に良曲が多い。「永遠
と一瞬
」(←叶月的今作のハイライト)「深呼吸」は美メロの王道をゆく名曲だし、「春景色」「
ッグイヤー
」「五月雨」辺りは見かけによらず、実は中毒性をも兼ね備えている藤巻さんのメロ
ディーセンスが活かされたスルメ曲。アルバムの始めと終わりにインパクトのある曲を持ってく
る一方、中盤に凡曲が多くて退屈、というアルバムは少なくない中、このアルバムの中堅部
分における信頼性は大きいものがあります。その他の楽曲も良曲揃いで、ジャケットが示すよ
うな彩り豊かな作品を聴くことができたと思う所存です。
 その「彩り」の裏には小林武史という敏腕プロデューサーの存在もあるワケですが、この「小
林プロデュース」の今作、叶月としては全体のバリエーションの増加に一役買ったという点で
吉と出たんではないか、と思っています。敏腕によるプロデュースを施されつつも、あくまでも
藤巻さんが手がけた楽曲のメロディーセンスはアルバム内でも光っているし。「小林プロデュ
ース」という売り文句にアルバムの完成度を一任してしまっていないところはさすが。
 あと、思うところは藤巻さん、けだるい歌い方上手くなったね…(2005/4/24)
TITLE  HORIZON
Released  2006.5.17
SINGLES  「蒼の世界」「粉雪」「太陽の下」
Evaluation  ★★★★★☆☆☆☆☆
 ついに彼らの代表曲といえる「粉雪」を世に送り出し、その地位を不動のものにしたレミオロ
メンの3rdアルバム「HORIZON」です。なんかこのアルバムが発売された頃のメンバー写真(
)がw-inds.みたくおすまし顔で、「おいおい君たちはアイドルじゃなくてロックバンドだろ?
と微妙な心持ちになったものですが(笑)。
 で、このアルバム、リードタイトルでCMソングにも起用された「スタンドバイミー」をアルバム
に先駆け耳にして、その圧倒的な爽快感・ポップ感を感じた時から何となく予想はついていた
のだけど、これまでにも増して大衆向け要素が強まった内容になってます。
まず装飾音が増した。前作「ether」からその傾向はあったが、今回はそれ以上。こっから3ピ
ースの音抜いてもだいぶ音数残るだろー、みたいな。「ether」を聴いた時は「そんなに悪いモ
ンでもないんじゃないかな」と思っていた自分も今作の装飾の多さにはちょっと首をかしげてし
まいました。前作までは楽曲ありき、装飾はあくまで装飾という程度であったと思うけど、今回
はアレンジのきらびやかさに楽曲が引きずられてしまっている。シングル曲をはじめ「プログラ
」「傘クラゲ」「紙ふぶき」など、基本的には藤巻クオリティーのメロディーは健在なんだけど、
1-2 Love Forever」とか「明日に架かる橋」あたり、受けのよさそうなものを変に意識しすぎ
て空回ってる気が。特に後者は「メロディーラインが予測しないところにいく」という以前からの
評判を意識してのものだってのがわかりやすすぎ。歌詞も歌い出し「夢見てOK それでOK」っ
て何じゃそりゃ。
 何だか、あまり良くはない意味で「リスナーの期待に応えようとしている」様子が窺い知れて
しまうんですよね。確かに世間は彼らにミスチル・スピッツのようなポップメイカーとなることを
望んでいたけれども、それイコールただウケのよさそうな演出を施せばいいってものじゃあない
でしょう。自分たちが行き着くべき到達点こそ見定まったものの、そこに至るまでの道筋にお
いて迷走しているような。売り出されの頃から(レコード会社などの思惑に)振り回されている
印象のあったこのバンドも、それなりに売れてくればちゃんと自立したアイデンティティーを発
揮できるか思っていたが、実際に売れてからも依然振り回されてる、そんな気がしてしまいま
す。「これが俺たちのやりたい音楽だ!」という確固たる信念をもってできたアルバムなのだと
したら、もう言うことは何もないのですが。(2006/11/12)
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