ALBUM REVIEW



locofrank

TITLE  Starting AGE
Released  2003.10.8
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★☆☆☆☆☆
 彼らのことを初めて知ったのは、CATVで時々見かけた「voyage」のPVで、ブラウン管ごしに
見た彼らは何の変哲もないただのメロコアバンドのようで、やってる曲も大して目新しいアイデ
アも見当たらなくて、実は長いこと軽視していたバンドだったのです、このlocofrank。
で、それからまた新作が出るとのことで冷やかし程度のつもりで過去音源をあさってきたので
すが、これが予想に反し「ありふれたパンクバンド」という彼らの印象を塗りかえるに値する内
容だったのです。そんなlocofrankのメジャー初音源がこの「Starting AGE」です。
 彼らが他のパンクバンドと差別化できる要素はというと、個人的には「メロディーの良さ」より
もまず、メロディーに対する英語詞の当て方と、その発音の良さにあると思う。日本語詞の曲
でよく見られる「このメロディーの起伏にこの言葉はないだろ」という、メロディーと歌詞のイント
ネーションとの齟齬というものは英語詞の曲にも同様にあって、メロディーの起伏と英文のイン
トネーションとがきちんと噛み合うことで、こんなにも曲全体がスムージーに流れるモンなのか
ということを、このアルバムを聴いて認識させられました。でもってVo.の木下氏、意外にも発
音が流暢!流暢な英語は曲の流れのスムーズさに拍車をかけます。ただ一つ難を言えば、
対訳は直球も直球の青春パンク。
 しかし、このミニアルバムの段階ではまだ「普通のパンクパンド」の域を出てない印象。持ち
前のメロディーの良さも、他のパンクバンドと差別化できるまでには至ってないような。あと、曲
の随所におちゃらけたボーカルが挿入されており、これが水をさしてるとまでは言わずともバン
ドの青臭さを思わせる。後から振り返ってみてこそ微笑ましい初期作品ではあるが、当時この
アルバムを聴いていたら、日本のロックシーンにごまんといるパンクバンドの群れの中で脳内
埋没していたかもしれないです。
 とはいえ、後のlocofrankの成長を予感させる佳作もちらほらと見受けられるのもまた然り。
It's OVER」はその一例で、後にフルアルバム「ripple」でリテイクされているのもうなずける一
曲。「PLAY IT!!」なんかも、疾走感でグイグイ押すような曲ではないにもかかわらず、アルバム
内では比較的印象に残りやすいナンバー。また、演奏のスキルであればこの頃から完成され
てると言ってもよく、そういう意味でも後のlocoを想像するのも難ではないミニアルバムではあ
ります。(2005/10/24)
TITLE  ripple
Released  2004.6.2
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 「Starting〜」のレビューでも書いたように、このアルバムが発売された当初、CATVで時々
見かけたリードナンバー「voyage」が全然いいと思えなかったのですが、その後自宅のコンポ
で聴いてみたらそんな印象を吹き飛ばすほど素晴らしいと感じてしまったのです。本作はその
「voyage」を含むlocofrankのメジャー1stフルアルバム。
 先のリード曲が冒頭を飾るこのアルバムですが、アルバムの前半部では「Prepare for life
BE FULL」「no title」と次々に佳曲が飛び出してくる。そう、何と言ってもこのアルバムでは前
作と比較してメロディーの良さが格段に上がった。「Starting AGE」の段階からその点はすで
に評価されていたのだけれども、今のlocoに通じるメロディーセンスはこのアルバムから確立
されたと個人的には思ってます。とにかく、この前半4曲は聴いてて無条件に楽しい気分にな
れる、この一言に尽きる。
 と、ここまでの流れは素晴らしいんだけど、残念ながら後半部は聴いてて正直退屈に感じて
しまう。基本的に3ピースメロコアバンドというスタンスであるからに、サウンドをあれこれいじく
ったりしてバリエーションを増やすのではなく、メロディーの粒を揃えることが基本的な手段で
あるワケなのだけど、アルバム全編にわたって良メロを採用しきれなかったか。前作随一のメ
ロディックナンバーをリテイクした「It's OVER」も、前作からの進歩は見られるもののやはり冒
頭部の楽曲群の求心力にはおよばず…収録曲頭4曲が佳曲揃いなだけに、頭でっかちな感
じが拭えないのです。とはいえ、この冒頭4曲はホントに素晴らしいので、これだけでも一聴す
る価値はある一枚だと思います。
 ところで余談までに、シークレットトラックのあの女性ボーカルとおぼしき声はどちらさんので
しょ?ていうか間の無音部分、8分はいくらなんでも長すぎ。シークレットトラックは本来耐えて
聴くようなモンでも、早送りする手間をかけるようなモンでもない。(2005/12/11)
TITLE  Shared time 
Released  2005.8.24
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 「ripple」を聴いた感想として「1〜4曲目だけの評価だったらもっと高いんだけどなぁ」と思った
のですが、このミニアルバムはちょうどそんな理想に応えてくれるような、さながら「ripple」の
冒頭部のクオリティーをぐっと凝縮したような一枚になりました。
安定した演奏・良メロ・流暢な英語に加え、これまでは唯一の弱点かな、と思っていた青春パ
ンク節炸裂の歌詞(訳詞)も、ここにきて変革の兆しが見えてきた。
 1曲目の「Recall」からいきなりロコのポテンシャルの健在ぶりをうかがわせてくれる疾走チュ
ーン。もはやこの手の曲はお手のものかな、と思っているうちに始まる表題曲(と言っていいの
かな?)「share」が今作のハイライト。この曲において注目なのは、彼らのキャリアにおいて今
までありそうでなかった「エモ」の要素が導入されたこと。こなれたバンド演奏・良メロ・流暢な
発音・新たな一面を見せた歌詞、といった全ての要素が見事に結実した大傑作となっており
ます。モータウンのトリビュート盤「ROCK MOTOWN」でStevie Wonderの名曲をカバーした
OVERJOYED」もなかなかイイ感じ。ソウル・バラード系をラウドロック、とりわけパンク勢がカ
バーするとたいてい評価低かったり、実際原曲のよさを食いつぶしてるケースも少なくない気
がするんだけど、この曲では全体的にはっちゃけたりすることなくテンション抑えめで、原曲に
対するリスペクトを忘れてないさまが見てとれる。エレキとアコギの折衷による演奏で、まるで
海岸沿いをドライブしているみたいに爽やか。
 それにしてもくどいようだが、初対面の印象は掃いて捨てるほどいるようなパンクバンドとい
うものだった彼らに、ここまで好評価を下す自分がいるとは思わなかったなぁ。5曲15分という
短い時間の中に、locofrankの現在形の魅力が凝縮された名盤です。
 あとこれはすごい個人的な意見なんだけど、「put feelings into the shadow」のBメロがバン
アパ「Eric.W」のBメロに似てたり、「The ones who seek」のBメロがこれまたバンアパ「fool
proof
」のBメロの構成に似てたりと、もしかして彼ら「K. AND HIS BIKE」期のバンアパに影響
受けてた?なんて思っちゃったんだけど、まぁ考えすぎでしょうな(笑)。(2006/2/8)
BACK P-MUSIC TOP