ALBUM REVIEW



GOING UNDER GROUND

TITLE  かよわきエナジー
Released  2001.10.24
SINGLES  「アロー」「グラフティー」「センチメント・エキスプレス」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 GOING UNDER GROUNDのメジャー1stフルアルバム。
 メジャーデビュー作らしく後のGUGの作品と比較してもロックバンドの初期作品らしい、よくも
悪くもバンドの若さを感じる一枚になっている。しかし、後に肩書きとして定着する「胸キュン」
なメロディーセンスや、時にアクセント的に、時に曲の中核的に用いられるキーボードはこの頃
からすでに絶妙。sg曲「グラフティー」は初期のGUGを代表する名曲といっていいだろう。終始
性急なテンポで駆け抜けるかのようなバンドサウンドがスリリング。「雨の樹」「」「アロー」で
は先に述べたハートウォームなメロディーが光る。「ショート バケイション」は後のアルバムに
ちらほらと散見される「お遊びソング」。でもなぜかこれ以降のそれに比べてもあんまりアルバ
ム内で浮いている印象はないです。表題曲「かよわきエナジー」では曲の後半からなんとあの
「カントリーロード」になだれ込む。オリジナルのまま終わらせてもよかったような…この辺も初
期衝動的といいますか、若気の至りですねぇ(笑)。
 というように、今と比べていろんな意味で普通のロックバンド然としているものの(いや、ロッ
クバンドなんですけれども)、後のGUGにつながる要素もすでに確立されていることをうかがわ
せてくれるアルバムだ。ただ、GUGクオリティーとしては標準以上の曲が揃ってると思うんだけ
ど、アルバム一枚としてみると何となく他のGUGのアルバムに比べて印象は薄かったりも。ロ
ックバンドのアルバムとしてはパンチが足りないと感じるためかな?そんなGUGのメジャー1枚
目ですが、リリースを重ねるにつれその作風は普通のロックとは一線を画していく。今シーン
にそれなりのアイデンティティーと知名度を提示することに成功しているその勝因は、「桶川の
ウィーザー」との別称に象徴される泣きのメロディーセンスにあった。(2006/7/21)
TITLE  ホーム
Released  2002.9.11
SINGLES  「ミラージュ」「ランブル」
Evaluation  ★★★★★★★★★☆
 実は叶月、ゴーイングとの始めての接点は「サンキュー」ではありません。当時各FM局・CA
TVでヘビーローテーションの嵐、まさに引っ張りダコだったsg曲「ミラージュ」であります。
愁いを帯びた詩をエッジのきいたギターに乗せたこの曲は、音楽的には結構当時からツボで
よく聴いていた曲ではあるのですが、その時は「聴こえた君の匂い」とか「春が降ったよ」とか
いう抽象的な歌詞がどうも自己完結してるっぽいなぁ、という印象止まりでした。
よもやその2年半後、彼らの音楽に覚醒した自分がいるとは予想もしておりませんでしたが。
 そんな「ミラージュ」を含むメジャー2ndアルバムが、この「ホーム」です。
 全体として望郷的で寂しげな雰囲気をかもし出す面々。けれど、かといって楽曲同士に似た
り寄ったりのものがあったりして、その全ての楽曲ごとのアイデンティティーが埋没する結果に
なっていない。やや焦燥感をもってアルバムの序盤を駆け抜ける「さびしんぼう」「ミラージュ
、言わずと知れた彼らの代表曲「トワイライト」の前身とも言えそうな「シンドローム」、シンプル
で懐古的な演奏が聴く者の心情をコチョぐる「その事」「少女」、中盤で誰しも物語の世界へと
トリップしたかのような感覚に支配される「タッシ」、圧倒的なメロディーセンスと空間的なアレ
ンジでリスナーの心に迫ってくる「ランブル」など、1曲1曲に違った顔を見せていて、本当に味
わい深い。
 このアルバムがかくのごとく完成度の高い作品に仕上がった所以は何なのかというと、上手
く言えないんだけど作曲陣のお二方(松本氏・河野氏)が純粋に自分たちの音楽を聴かせよう
としている気がする。というのも彼らのアルバムって、中に1曲や2曲はリスナーの顔をほころ
ばせるのが目的の「お遊び」のような曲が入ってたりするんですよ。こう、「楽曲的には聴き劣
りもするけどとりあえず一緒に楽しみましょう
」というような… でも、今作にはそういった余興
の曲がなく、結果的になべて音楽作品として評価されうる楽曲を作り出すことに成功している
というか。当の本人ではないので実際のところは定かではありませんが。。
 というワケで、後追いの際には「ハートビート」と並んでオススメのアルバム。捨て曲はないと
言ってもよいですが、前述のように寂寥感の溢れる作品なので、コレが万人に受け入れられ
るとは必ずしも言えないという意味で★9コ。上に列挙した曲の中でも、「その事」「少女」「ラン
ブル」は一押しです。(2005/3/20)
TITLE  ハートビート
Released  2003.10.22
SINGLES  「ダイアリー」「トワイライト」「ハートビート(リカット)」
Evaluation  ★★★★★★★★★☆
 シングル「サンキュー」で彼らの音楽に興味を持った叶月がまず聴いてみた作品。
 「トワイライト」とともにGOING UNDER GROUNDのひとつの転機ともいえるであろうこのアル
バム。この頃からこのバンドの肩書きとして「胸キュン」という言葉が以前にもまして頻繁に
用いられるようになったように思われる。(もしかすると単にこのバンドの知名度がメジャーシー
ンに浸透してきたのがこの時期だった、ってだけかもしれないが)中身の方も前作「ホーム」と
は、基本的な音楽性は共通にもちながらもだいぶ作品の色合いに変化が見られる。「ホーム」
を暗色系とすれば、「ハートビート」は明色系、加えて暖色系といった感じ。以前にも増してぐっ
とポップなサウンドになっている。
 でも、今回はそんなサウンドを追求した結果、何度も聴き込んで味わう作品というよりは、聴
いた時のポッと出てくるインパクトが大事にされるような作品に落ち着いてしまった側面もある
と思う。個人的には「月曜日雨のメロディー」辺りがその一例で、表面をなぞらえることで得ら
れるポップさだけ楽しんでもらえればそれでいい、というような印象を受ける。まぁそれが彼ら
の新しいサウンドアプローチなのだといえばそれまでなんですが。
とはいえ、「トワイライト」で見せたあの臨場感、高揚感はまぎれもなく彼らが「胸キュン」サウ
ンドなるスタイルを確立できたことの証明であります。この路線に傾倒したことは、粗雑な表現
で言えば楽曲の幼稚さを助長させてしまっている気もするけど、ゴーイング史上最高のポップ
アルバムと言えるのではないでしょうか。
 叶月的には「ビターズ」がこのアルバムのハイライト。曲の冒頭から延々続くギターのアルペ
ジオを主軸に、部分部分に巧みに挿入され、後半から曲の中心として高らかにうねり出すキ
ーボードの組み合わせが地味に病み付きになる曲。今までに何度聴いたか分からん。難点と
してはラストトラックの「」…起伏の控えめなスロウナンバーで、咀嚼のしがいはありそうだけ
ど、これが7分20秒はちょっと最後まで聴くのに根気が…(2005/2/28)
TITLE  h.o.p.s. 
Released  2005.2.9
SINGLES  「サンキュー」「同じ月を見てた」「アゲハ」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 叶月がGUGにハマって以降初となるアルバム。最新アルバムこそがそのアーティストにとっ
ての「今」の音であるワケだから、期待もひとしおだったというワケです。
 GOING UNDER GROUNDというバンドを語るにあたって、今や「胸キュン」というキーワードは
どこにおいてもついてまわる言葉。(当サイトにおいても…/笑)ただ、個人的には彼らの音楽
を形容するのに「胸キュン」という表現が最もふさわしいかと言うと、実はそうは思っていない。
この「胸キュン」というコンセプトは、「トワイライト」辺りからGOING UNDER GROUNDの作風に
新たな道を拓いた一方、この作風に固執するあまりに彼らの音楽のさらなる飛躍を抑制して
しまっているようにも思えるのである。
このアルバムにおいては、「恋のナビゲーション」がその典型。「恋を応援する」というコンセプ
トにのっとったこの曲だが、楽曲としてはプロが作った曲とは思いがたい…(^^;
 しかし、「TENDER」以降の後半4曲は実に秀逸な完成度だと思います。
これら4曲はアルバム「ホーム」までの、恋だとか胸キュンだとかに束縛されすぎない作風の
流れをくんでいながらも、「現在形」のGUGの「胸キュン」サウンドも取り込んだ、いわば「今の
GUGの集大成」的な曲。
「胸キュン」という言葉は文字通りに解釈するならつまり「胸がキュンとなる」のであって、
GOING UNDER GROUNDの胸キュン真髄とはこういった楽曲にあるのだと思う。
 総評は上で述べた二面性を差し引きして一歩前進、ってところかな?でも、飛ぶ鳥を落とす
勢いで進化しなくたって、一進一退の中でちょっとずつ進んでく感じが彼ららしくていいじゃ
ないですか。そんな彼らのさらなる成長を、気長に待ちたいと思います。
 ちなみにこのCD、初回限定版には先行シングル2曲のPVが収められているのですが、改め
て「サンキュー」のPVは素晴らしい… 見られる環境にある人は是非このPVで「胸キュン」して
下さい(笑)(2005/2/23)
TITLE  TUTTI
Released  2006.2.22
SINGLES  「STAND BY ME」「きらり」「Happy Birthday」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 メジャーオリジナル5枚目。前作「h.o.p.s.」がオリコン週間アルバムチャート10位を記録し、勢
いづいていたとおぼしきこの頃なのだが、アルバムの方は彼らの「壁」を感じる内容になってし
まっている。
 前作までのサウンドに比べると、今作ではだいぶ生音らしさが抜けて、打ち込みっぽい感触
の音が割合を占めている。もはや冒頭の定番であるインスト「Primary Music」がこのアルバ
ムの音の概要を代弁していると言っていいかもしれない。GUGの顔といえるキーボードはもち
ろん、例えば「キャンディ」ではドラムが一部打ち込み、「ノラ」ではスクラッチ音なんかが顔を出
すのが新しい。曲作りはもはやこなれたもので、一曲一曲のメロディーやアレンジの充実度は
高い。確実にステップアップした一枚だと思う。耳辺りのよさでは彼らのディスコグラフィーでも
随一だろう。
 けれども、そんな耳当たりのよさ・ポップさを念頭に置いて作られた楽曲の中には、あまり引
っかかってこないものもあった。上述の「壁を感じる」というのは、この点にある。
ギターバンドという枠組みにとらわれないインストゥルメントをあれこれ導入してみることで、サ
ウンドはバラエティーに富んだが、一方で「不器用だけどその不器用さが感傷を誘う」というよ
うな従来のGUGの持ち味は、これまでの作品に比べて若干希薄に感じられた。もちろん、バン
ドってのはキャリアを積むにつれて上達していくものだし、あらぬ方向へ向かっているとは思わ
ない。が、表現の余裕を獲得するにつれ「ぶきっちょゆえの感傷」が薄れてくという、完璧に近
づくゆえのパラドックスを感じてしまったのである。
 それでも、シングルとなった「STAND BY ME」や「きらり」はそんなジレンマを覆すに足る叙情
性を持った名曲だし、アルバム曲でも「口笛どろぼう」「orion」「いくつになっても」は好きだ。あ
れ、ていうか上でちょっと酷評した曲も聴いてるうちにだんだん悪くないかも、って思えてきた
…(何なの)こう、なんだかんだで「やっぱりいいね」と思わせてしまうところも、彼らの作品の
魅力のひとつなのかも。(2006/7/26)
TITLE  BEST OF GOING UNDER GROUND with YOU
Released  2006.6.28
SINGLES  「VISTA」「ハミングライフ」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 急遽発売となったGUGのベスト盤。おなじみ河野氏による書き下ろしインスト「my dear」と、
両A面シングル曲「VISTA」「ハミングライフ」が初収録。
 曲目の方に目を通してみると…あれ?私的GUG最高傑作の「サンキュー」がないぞ?それ
だけでなく、「ミラージュ」や「きらり」といった叶月のフェイバリットシングル曲もことごとく収録さ
れてない。付属のライナーノーツでもちょっとフォローされてるけど、これにはさすがにがっかり
だなぁ…。メンバーによる選曲とのことだが、公のベスト盤として発表する以上ある程度の代
表曲のメンツは揃えてほしかった。ちょっとこのチョイスはメンバーのプライベートな思い入れが
強すぎるんじゃないかなーと思う。残念ながら自分にとってはこれはベストとは言えません。
 しかし、フェイバリット曲をいくつか外されたとはいえ、ざっとGUGの作品をさらう分には悪くな
い一枚ではあると思う。それに、この時点での最新シングル「VISTA/ハミングライフ」はおそ
らくこのベスト盤にのみの収録となると思われるので、無視はできない。特に「ハミングライフ
の方は映画のエンドロールさながらの余韻をもったGUGのシングル曲でも指折りの名曲で、オ
ープニングの「my dear」からエンディングのこの曲まで通して聴くと、まるでGOING UNDER
GROUNDというバンドのドキュメンタリー作品でも観させられているかのような請求力がある。
ただし、これを聴いて「いいな」と思ったGUGビギナーの人はこれをあなたの「ベスト」だとは思
わず、ぜひとも他のオリジナルアルバムも聴きましょうね。(2006/7/26)
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