ALBUM REVIEW



ELLEGARDEN

TITLE  BRING YOUR BOARD!! 
Released  2003.7.2
SINGLES  「ジターバグ(リカット)」
Evaluation  ★★★★★★★★★★
 発売日の7月初旬頃から、しばしばこのアルバムのリードシングル「ジターバグ」のPVが
CATVで流れていて、「あ、コレいいかも… TSUTAYAに置いてあったら借りてみよう」と何と
なく思いながらも店頭に並ぶことはなく、結局思い切って買って来てしまいましたというのが
叶月とエルレとの出会い。気づけば夏も終わりの8月下旬で、余談ですがアジカンの「未来の
破片
」に出会う1日前のことでした。振り返ってみてもエルレにアジカンとは、この頃ほど俺に
とって素晴らしいアーティストとの出会いが重なった時期はないな…
 疾走感溢れるナンバーやエモーショナルなナンバーなどバラエティーに富む全11曲だが、
その全てが基本的にエネルギッシュなギターサウンドから成っている。かといって、通して聴
いても消化不良を起こすことなく、さらっとお茶漬けのように(?)おいしくいただけてしまう。
これはひとえにVo.細美氏のソングライティングのセンスによるもので、彼の書く曲がことごとく
ポップでキャッチーであることが、このアルバムを単にうるさくて飽きが来るのが早い作品たら
しめることを回避している。
 そんなこの作品、ぶっちゃけ「うるさいの自体ダメ」って人以外にはあまねく広まってほしい
傑作アルバムだと思うワケですが… 疾走感が売りの1〜3曲目が一般的には人気が高く、
特に3曲目の「ジターバグ」はエルレ史上最高峰に位置する佳曲かと思われます。後の4曲目
以降はリスナーにより好みも様々に分かれると思いますが、とにかく全体に統一感があって、
飽きのこない作品であります。余談までに叶月は8曲目の「Dancing In A Circle」が「ジターバ
グ」に匹敵するお気に入りです。
なお、エルレを知る人の間ではよく言われることですが、細美さんの魅力の一つには英語の
発音の流暢さもあります。「インディーズ系バンドって何か英語ヘタクソでダメなんだよね〜…」
(失礼;)というあなたにも、おすすめな一品です。
 ちなみに上のカタカナ表記でわかるように、このバンド名は「レガーデン」です。エルレ
の作品にハマって、後日友達に「俺最近エレガーデンハマってんだよね〜」とか言って赤っ恥
かかないように!(笑)(2005/3/2)
TITLE  Pepperoni Quattro 
Released  2004.5.26
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★★★★★
 前作から1年足らずに発売のニューアルバム。波に乗ったか、ELLEGARDEN!(ぇ
 えぇと、前作で楽曲・歌唱力・歌詞などの各要素で驚くべきクオリティーを見せつけてくれた
エルレですが、今作は前作の出来に少しも劣ってない、というかむしろ前作以上にキャッチー
な展開を見せてくれちゃってます。基本的なスタンスは前作と全くと言っていいほど変わって
ないので、「『BRING YOUR BOARD!!』をさらにポップかつキャッチーにすることに成功した作
」といえば事足りてしまうのでは。さながら「BRING YOUR BOARD!!」が示すベクトルを、その
ままの方向に引き延ばした感じです。
 予想の範疇でしかないんだけど、このアルバムを手にとったとき、誰しも今自分が持ってい
るディスクの中に詰め込まれた音楽にある種の信頼があったと思う。エルレ初心者の人以外
は。や、買ったCDの中身に期待するのは当たり前のことだろう、といえばそれはそうなんです
が、一般のアルバムって収録曲の全部が全部、いつでも聴きたいと思える名曲揃いであると
は必ずしも言えないと思うんですよ。いつ聴いても受け入れないような駄曲もあるだろうし、日
によって聴きたかったり聴きたくなかったりという曲もあると思う。
でもこのアルバムの場合、なぜか「このアルバムを聴いてみてがっかりすることは絶対ない」
と根拠もない確信をもってた。で、結局その確信は単なる願望や反実仮想なんかではなく、思
った通りの捨て曲一切ナシの傑作だった、と。そんな聴く前から感じる「エルレは自分の期待
を裏切らない
」という絶対的な信頼ってのが凄いなぁ、と思わされるワケですよ。このバンドに
は。(2005/3/3)
TITLE  RIOT ON THE GRILL  
Released  2005.4.20
SINGLES  「Missing」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 ブレイクポイントとなった4thフルアルバム。
 結論から先に言ってしまうと、このアルバムは前後作と比べるとあまり聴いていない。どうにも
彼らの本来の魅力である吹っ切れ具合や足取りの軽さが、今作では若干希薄に感じられるか
らだ。冒頭の「Red Hot」はもはや序盤の定番だが、お手の物すぎてサラッと流れてしまうし、
Snake Fighting」の爆音イントロもやりすぎって感じだ。アガッてくるというよりはむしろ呆気に
とられてしまう。アルバム中では一つの山場であるハズの「」「I Hate It」もなんか予定調和な
感じで個人的には退屈。シングル曲「Missing」やそのカップリング「TV Maniacs」の他、ナノム
ゲンコンピにも収録された「Bored Of Everything」とかは結構好きなんだけど…。好きな曲とそ
うでない曲とでムラがある一枚だったりする。
 時期的には、リスナーがエルレというバンドの存在に振り向きだしている頃である。徐々に人
気が沸き始めている中、純粋な創作意欲より「いいモノを作ろう」「ウケるものを作ろう」という使
命感の方が先行してフットワークが重くなってしまっているのではないか、と勘繰ってしまう。次
作「ELEVEN FIRE CRACKERS」ではその葛藤が音の方にも反映され、これまでとは違うソリッド
なエルレ像を提示することに(皮肉にも)成功しているのだが、バンドとしての在り方を模索する
あまり自然体を失いかけてしまっているような印象を受ける今作は、自分にとってはやりたいよ
うにやった前作にも、切実感に満ちた次作にも振り切れてないどっちつかずな位置づけである。
しかし、言い換えれば細美氏の中でこうしたジレンマがあったからこそ「ELEVEN FIRE CRACKE
RS」が生まれたのであって、そういった点では今作も彼らのディスコグラフィーにおいては必然
といえる作品ではあるのだけれど。(2010/3/28、全面改訂)
TITLE  ELEVEN FIRE CRACKERS  
Released  2006.11.8
SINGLES  「Space Sonic」「Salamander」
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 オリコン初登場1位を記録し、彼らにとって最大の売上を叩き出した5thアルバム。であると同
時に、ELLEGARDENのオリジナルアルバムとしては今のところ最後作となっている作品。
 前作「RIOT ON THE GRILL」は、はっきり言ってあまりハマりきれなかった。何が足りないって
聞かれると返事に窮するのだけど、随分と他人の目を憚ってるなぁ、という気がしたのだ。「大
衆受けしそう」といえばその前2作もそうなのだが、前作はとりわけ「リスナーの目を気にしてる」
ように思えた。ラウドでポップで一見自由奔放に見える楽曲群の中に、シーンの期待というしが
らみにとらわれた彼らが垣間見えた。
ライナーノーツを読むにつけ、実際フロントマンの細美氏はシーンに認められ、成功したことによ
る葛藤を少なからず抱えていたようである。しかし、そんな細美氏の苦悩が今作の作風におい
ては吉と転じた。このアルバムにおいて、前3作に見られたようなはっちゃけた振る舞いの彼ら
は存在しない。しいて言えば先行シングル「Space Sonic」のPVでかろうじて女装したメンバー
を拝むことができるが、曲自体は至極シリアスで真面目な雰囲気である。そしてアルバムを通
じて一貫されたシリアスネスは「あえてそうした」ものではなく、「そうせざるを得なかった」という
バンドの状況が生み出したものではないだろうか。(先のPVでの悪ふざけも当時の彼らにとっ
てはせめてものアピールだったのではないかという深読みさえしてしまう)だからこそ、当方に
はそういった見せかけではない切実性がこのアルバムからはストレートに伝わってくる。その点
で、今作は「BRING YOUR BOARD!!」や「Pepperoni Quattro」とはまた違う意味での自然体を
取り戻しているように思えるのだ。
 と、ここまでくどくど語ってきた後に言うのは気が引けるが、このアルバムを聴くのに本来そん
なバックグラウンドノーリッジは蛇足にすぎない。背景はどうあれ、このアルバムは近年の彼ら
にはなかった一面をありのままクローズアップしえた傑作。当方にとって、今作を評価するにあ
たってはこの一言に尽きる。シングル曲「Space Sonic」「Salamander」やそのカップリング曲
Alternative Plans」をはじめ、アルバムでも高揚の極致を迎える「Gunpowder Valentine」「
ッシュ
」の疾走感は圧巻。(2010/4/7)
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