ALBUM REVIEW



BEAT CRUSADERS

TITLE  P.O.A.〜POP ON ARRIVAL〜
Released  2005.5.11
SINGLES  「HIT IN THE USA」「FEEL」
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 噂の(?)お面バンド、BEAT CRUSADERSのメジャー1stフルアルバム。
 ヒダカトオル氏曰く、このアルバムのコンセプトは「名ばかりの『ポップ』を語った音楽が蔓延
する現代の音楽界に対する、自分にとっての『ポップ』とは何か、の回答
」とのこと。ポータブル
機器の進歩による「CDの売れない時代」の到来、もはや出せるアイデアは出し尽くされてしま
ったのだろうか、これに輪をかけるかのように凡庸化していくヒットチャート、果ては何らリスペ
クトの見出せないカバー曲の乱発、ドラマタイアップに関連した過去の大ヒット洋楽曲の再リリ
ース、アニメヒットに幅を利かせて新人を起用する、目先の利益ばかりに捕われた強引なタイ
アップ…と、陳腐化の要因を挙げれば枚挙にいとまがない現代のJ-POPシーンにあって、独
自の「ポップ」を武器にヒットチャートに斬り込みをかける彼らの立ち位置は、メジャーシーンに
彗星のごとく現れたまさに「お面の騎士」なのだろう、なんて。(ぁ
 …ただ、叶月にとっては正直なところ「即ポップ(POP ON ARRIVAL)」じゃなかったぞ(^^; 
言うなれば「スルメポップ」と言ったところか。もっとこう、脳天突き抜けるほどポップな代物を想
像していたもので… 「自分達にとっての『ポップ』とは、曲を聴いた時に感じる意外性である」
と、ヒダカ氏はとあるインタビュー上で定義しているが、だとすればなるほど、確かにこのアル
バムに収められている楽曲はこの上なくポップなのかもしれない。「〜SASQUATCH〜」や「R
USK
」辺りはまさに「意外性のポップ」の言わんとするところだろう。
 そんな中でもシングル曲・前ミニアルバムからの既出曲を除くと、意外にも「BLOCKBASTAR
D
」がいたく気に入っちまいましたよ。Aメロはシンセサイザー(!)、Bメロはギターのカトウタロ
ウ氏、でもってサビはヒダカ氏がボーカルを担当する、変則的ボーカル3人編成ナンバー(笑)
で、メロディーも甘酸っぱく切ない良メロと、「意外性としてのポップ」としても「親しみやすさとし
てのポップ」としても作用する逸品。アルバム内では地味な位置付けかもしれないけど、さり
げなく好きです、コレ。初回版限定ボーナストラックの1曲「SAY GOOD-NIGHT」も、胸を打つメ
ロもさることながら「ヒダカ氏ってこんな歌い方できるんだ」という意外性があっていいですね。
 ともあれ、ますますJ-POPが商業化の一途を辿りつつある今、「ポップとは何か」の指標、と
いうよりは「ユニークな音楽性を打ち出すこと」の指標を打ち出したという点で、このアルバム
は大きな意義をもった作品と呼べそうだ。ヒダカ氏にはぜひとも、今の腐りかけのヒットチャート
に怒り(と書いてPOPと読む)の鉄槌を振り下ろしてもらいたいものです。(2005/6/23)
TITLE  MUSICRUSADERS
Released  2005.9.7
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 最近、J-POPに限らず映画・ドラマ・漫画といったエンターテインメントにおいてカバーやリメイ
ク作品が多く出回るようになった。カバーすることの動機というものはその主体により様々にあ
ろうが、どうせカバーするなら原曲と同じようなことはやってほしくないというのが個人的な意
見だ。カバーすることの意義を見出せないものには首を縦には振れないし、ましてやカバーを
流行の一つだと勘違いしている輩など論外。やるんなら「原曲と何を差別化したいのか」という
ことをちゃんと明らかにしてほしいのである。原曲を完全に自分のオリジナルと同等のレベル
まで咀嚼するのもよい。原曲以上の評価に値する作品を作り上げるくらいの意気で臨んでも
構わない。ただし、もちろん原曲の美点を相殺するような節操ないアレンジには同意しかねる
し、独自性を追い求めるあまり原曲に対するリスペクトが失われてしまうのもいただけない。本
来カバーとはかくも難しいものなのであり、つまるところカバーなんてしないにこしたことはない
と思うのが正直なところなのだが、それを言っては元も子もないのでここでは控えておく。
 本題に入ってこの「MUSICRUSADERS」。ビークルによる往年の名曲のカバーアルバムであ
る。とはいえ、ここに収められた楽曲は自分の生まれる以前に発表されたものが多く、懐かし
く思うものは少なかったりするのだが…。
その時点でこのカバーアルバムを語る資格はないのかもしれない。しかし、シンプルなエレキ
ギターにシンセ音にヒダカ氏のハスキーなボーカル。この3点が揃った時点でもはやどんな曲
もビークルの曲でしかありえなくなるワケである。元の曲を知らなくても、「ビークルのオリジナ
ルアルバム
」としての楽しみ方ができるということ。「原曲を自身のオリジナル曲まで昇華させ
」という点で、このカバーアルバムは十分機能している。
 けれども、その一方でやっぱりオリジナルアルバムほどのはっちゃけぶりを感じられないの
も事実ではある。そこはやはり彼らの原曲に対するリスペクトの表れなのであろう。繰り返す
が、カバーというのは原曲へのリスペクトとオリジナリティーとのバランス配分がとても難しいも
のであり、そのアーティスト、ことにビークルのようなバンドの本領はオリジナルアルバムで発
揮されると思う。もっとも、ビークルなりのアイデンティティーで味付けされた楽曲には「カバー
することの明確な意図
」を感じるし、初回版では実際のラジオを再現した構成になっており、彼
らならではの遊び心を感じられる一枚になっている。最後に自分たちの宣伝で終わるというの
もまた、いい(笑)安直なカバーアルバムでは、少なくともない。
 ところで聴いてると、「band apartの荒井さん・原さん」がこっそりラジオの視聴者に紛れ込ん
でますね(笑)接点あるのね、やっぱり。(2006/2/15)
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