ALBUM REVIEW



ASIAN KUNG-FU GENERATION

TITLE  崩壊アンプリファー
Released  2003.4.23(再発売版)
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 今や売れっ子の代表格となったアジカンのインディーズ時代のミニアルバム。しかし好評に
つき再リリースされたということを知る人はもはや少なくないでしょう。それと同時にこのアル
バムに収録されている「遥か彼方」がアニメ「NARUTO」のOP曲として抜擢され、話題には
拍車がかかることに。
思えば、この頃から彼らには今の成功に結びつく幸運の風が吹いていたように思える…。
 で、サザンやB'z格の大物が名声に幅をきかせて過去の作品を再リリースというケースなら
まだしも、当時のアジカンはまだ駆け出しの新人。そんな彼らだけに再リリースされたこの
作品はよほど完成度の高い一品なのだろうと、後追いのリスナーの期待をあおるこの作品
ですが、正直再リリースに至るほど一線を画していたかというと、そうとは必ずしも言えない。
他のどのアーティストでもなくアジカンのこの作品が異例の再リリースとなった、ということも、
彼らの「幸運」のひとつだったのではないかと(^^;
 とまぁ、しょっぱなから辛口批評ですが、結論から言って叶月はこのアルバムは良作だと
思っています。良作だと思っているし、実際かなり聴き込みました。一言で言えば、現在に比
べてまだ青い発展途上のアジカンだけど、それがまたいい味出してるな
、という感じ。
ソングライティングのスキルはまだ今のアジカンに遠く及ばないけれど、この西洋のかほりを
感じさせない国内産ロックな感じは今のアジカンに通じるものがあります。ASIAN KUNG-FU
GENERATIONというバンドの過去を知る手がかりとして、アジカンファンを自称する者なら絶対
聴かなきゃなアルバムですね。ただ、「アジカンってどんな音楽やってんだろ…」と思ってる人
は、コレから手をつけちゃダメです(^^;
 さて、そんな幸運の風に吹かれつつも、この「崩壊アンプリファー」のインディーズ版が発売
された2002年11月から1stシングル「未来の破片」が発売される2003年8月の間に、ゴッチの
ソングライティング能力は劇的に上昇。ヒットパレードの花道を歩み始めます。(2005/2/24)
TITLE  君繋ファイブエム 
Released  2003.11.19
SINGLES  「未来の破片」「君という花」
Evaluation  ★★★★★★★★★★
 それは、かつてない衝撃だった。ASIAN KUNG-FU GENERATION「未来の破片」。
イントロのノイジーなギターがしょっぱなから体中を揺さぶり、曲が終わるまでの4分50秒間、
心をとらえて一度たりとも離そうとしない轟音サウンド。
凄まじい衝撃だったのである。これまで叶月が聴いてきたいかなる音楽でさえ、叶月をここ
まで衝き動かすサウンドは存在しなかったのである。
忘れもしない2003年8月30日。ASIAN KUNG-FU GENERATIONに2秒で虜になった日。
 それから経つこと2ヶ月余、早くもアジカンの1stフルアルバムが発売との情報が耳に入る。
先の「未来の破片」に、10月発売の「君という花」を経て、もはや完全にアジカンワールドに
魅了された当時の叶月。「もはやこのアルバムを買う買わないの選択の余地はない」という
勢いでフラゲしました。
蓋を開けてみたところ、期待を全く裏切らない作品の数々。むしろ、シングルに収録された数
少ない楽曲にこのアルバムの楽曲が加わることで、より多面的な音楽性(東洋寄りのロックを
機軸としたサウンド)を見ることが出来た。「夏の日、残像」「無限グライダー」の望郷的な雰囲
気、「ノーネーム」の空間的な壮大さはこのアルバムで初お目見えではないでしょうか。
 アジカンって結構メディアのプッシュにも後押しされてブレイクしたバンドだと思ってるんです
が、「君という花」でリスナーの注目をひきつけ、そしてこの「君繋ファイブエム」でそれらのリス
ナーを虜にするという流れこそが、やはり今のアジカンブームに決定的だったと思うのですよ。
なワケで「アジカンの音楽をまとめて聴いてみたい」という人にはまずコレをおすすめします。
何より叶月が今までにない衝撃を覚えた「未来の破片」を、アジカンの音楽に触れたいと思っ
た人には是非聴いてもらいたい。つんざくようなエレキギターにゴッチのがなり声は、今となっ
ては後追いで聴いた人は軽い違和感を感じるかもしれないけれど、この曲こそがASIAN
KUNG-FU GENERATIONの最高傑作だと、叶月は信じてやまない。(2005/2/25)
TITLE  ソルファ 
Released  2004.10.20
SINGLES  「サイレン」「ループ&ループ」「リライト」「君の街まで」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 「君という花」⇒「君繋ファイブエム」の流れで、一躍売れっ子アーティストとしてのポジション
を確立したアジカン。2004年に入ってからはシングルを立て続けにリリースし、その全てが
ヒットを記録。そしていよいよ満を持してリリースされたのが今作であります。
しかし、先行シングルを手にとってみるに、リスナーに認められるに伴ってそのサウンド自体も
ポップであり無難なものに落ち着いてしまっている感があった。そんなアジカンの待望のニュ
ーアルバム、一体どんなものになっているのやら…?
 蓋を開けてみた第一印象は、やはりどうも一般大衆の目を気にしてる感が拭えなかった。
そもそも叶月がアジカンのどういったところをよしとするかというと、アグレッシブで破壊的な
轟音サウンドなのであり、詩の世界なら、ゴッチの言葉を借りれば「焦燥感」なのである。
僕の破片がァァっ」とシャウトしてた人が「君と僕の縁まわぁ〜ぁる」と歌ってた時にゃ拍子
抜けしてしまうのであります(^^;
 それからこのことはこのアルバムに直接の責任があるワケじゃないんですが、やっぱ売れて
くるとどうしてもアジカンの音楽に片足突っ込んだだけで最高とか言い出す人が増えてきて。
特に「リライト」に関しては某人気アニメのOP曲ですから…アニメのキャラクターとかもあいまっ
て「アジカン最高〜!!」とか言い出す輩も多かったのでは(爆)でも、大物になってもスターには
なってほしくなかった。黄色い声援に囲まれるアジカンなんて求めちゃいなかったんですよ。
そんなワケでこのアルバム、ぶっちゃけ初めの頃は印象良いとは言えませんでした。
 でも、発売からしばらく経ってからこのアルバムのよさというヤツがわかってきたんです。
以前の轟音ロックバンドとしての観点で見ると「おとなしくなった」で終わってしまうところだけ
ど、今回はアルバム内の1曲1曲にカラーバリエーションが出てきたと思う。「君繋」が「力強さ
、勢い」を共通のコンセプトとしてもった楽曲が合わさって、アルバム単位での力強さを表して
いるのに対し、「ソルファ」は楽曲ごとに異なる色をもった楽曲が合わさって、それがアルバム
単位でこれまでとはまた違ったアプローチとなっているというか。スゴく大ざっぱな表現で言っ
てしまうと、繊細でアーティスティックな作品ではあるかな、と。
 このアルバム、個人的には前作とはだいぶ異なる内容だと思っています。上で繊細と言って
いるからに「轟音」というにはなまぬるいとも思ってますし(何)かつて叶月が好きだったアジ
カンは変わってしまったけど、それはけしてがっかりさせられるような変貌などではない。
むしろ、これからアジカンの音はどんな風になっていくのだろうとこちらの想像をかき立てる…
そんなアルバムだと思う。(2005/2/28)
TITLE  ファンクラブ 
Released  2006.3.15
SINGLES  「ブルートレイン」「ワールドアパート」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 いきなりだが、M-3「ブラックアウト」は名曲だ。
「ナノムゲンコンピ」にも収録されたこの曲は、従来の轟音ギターバンドからよりポップな音を鳴
らすポップロックバンドというスタンスへ移行したことを思わせる碑石的な一曲であると感じた。
そして「ソルファ」以降初の音源となるこの曲を聴いて、来たるべき3rdアルバムへの期待は否
が応にもふくらんだものである。
その後、発売されたシングル2作。どっちもアジカンらしさはよく出てるんだけど、何か実験的。
別にプログレライクなことをやってるワケじゃないけど、これまでのアジカン像を脱しようとして
いる感じ。リズム隊がこれまでのアジカンと違い、わかりやすくない。直情を避けている。
モに回帰した
」とリスナーを騒がせた「ワールドアパート」でさえ、個人的にはそう感じた。
 そして、とうとう解禁となった3rdアルバム。結論から言って、「ブラックアウト」よりは先行シン
グル2枚の流れをくんだ作品だという印象。従来のアジカン像を逸脱しようとしているなと。
1曲目の「暗号のワルツ」からしていつもと違う。「君繋」や「ソルファ」の冒頭曲を回顧すると、
ますますこのアルバムは過去の作品とは趣向の異なるそれだということを実感する。他にも例
えば「センスレス」なんかもいろんな曲を一つの曲に凝縮したかのように目まぐるしくアレンジ
が変わる。何も考えずに楽しめるような音楽というよりは、発信された音に対してリスナーが何
かしら「考える」という行為を要求するような曲が並んでいる。かようにこのアルバムは、「轟音
、パワーポップ、エモ
」といった彼らに対するイメージを覆そうという気概を感じる一枚だと思う。
 が、しかしそれが叶月にとっていい変化だったかというと聞かれると、YESとは言い切れない
のが正直なところ。今回のアルバムを聴く限りでは、アジカンはあまり小難しいことをやっては
彼らの魅力を引き出しきれるに至ってない、と感じた。やっぱりたとえ彼らが耳の肥えたリスナ
ーに「やってることが単純すぎる」とハナで笑われようとも、彼らの初期の頃からの持ち味であ
る「わかりやすさ」はなくしちゃダメだ。そういう意味で、アルバム曲中では最も今までのアジカ
ンらしい直情疾走エモ「路地裏のうさぎ」が一番よかった。「未来の破片」や「サイレン」のよう
な焦燥感やシリアスさはなくても、キャッチーでおのずとテンションも上がるし、余韻もちゃんと
残る。これだよ、これなんだよ。俺が来たるアルバムに求めていたものは。
 まぁ、04年のシングルリリースラッシュにおける大衆ポップ化に対する叶月の疑問に、彼ら
は「ブラックアウト」で答えてくれた(と、勝手に思っている)し、このアルバムの試行錯誤に対
してもアジカンはこの先何らかの回答をしてくれると期待しています。とりあえず今回のところ
は「次回に期待」的な感想でした、ということで。(2006/6/10)
TITLE  フィードバックファイル 
Released  2006.10.25
SINGLES  -
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 アジカン初のBサイドコレクション。「絵画教室」「堂々巡りの夜」が蔵出しの新曲。
 まず最初に強調しておきたいのが、このアルバムには「未来の破片」のカップリング曲でこれ
までどのアルバムにも収録されてこなかった隠れた名曲、「エントランス」が収められているとい
うことだ。ってアルバム未発表B面曲がセレクトされてるのだから当たり前のことなのだけど、こ
の曲は何を隠そう叶月が「未来の破片」とともに初めてアジカンの音楽を聴いてガツンと衝撃を
受けた一曲なのである。人の嗜好というものはものの数年でも変わるもので、轟音ロックフリー
ク高校生だった当時ほどアドレナリン出まくりはしないのだが、今聴いても「未来の破片」と並
ぶまごうことなきアジカンの最高傑作だなぁと思う。この曲が収録されたということだけでもう手
放しで喜んだ一枚なのだ。
 それ以外の楽曲も佳作揃いである。これまで発表されてきたシングルのB面曲を発売順に並
べただけのアルバムなのに、オリジナルアルバムだよと言われても疑問に思わないくらいオリ
ジナルアルバムに収められるだけの水準を維持した曲が並ぶ。「Hold me tight」なんてなんで
A面曲になんなかったの?ってくらいキャッチーである。アジカンのシングルカップリング曲が充
実しているさまがうかがえようものだ。
 と同時に、このアルバムはコレクション作品であるからして今のところアジカンの作風の変遷
をアルバム一枚でたどることのできる唯一の作品である。轟音ギターバンドというポジションに
端を発すも、その殻を徐々に破っていこうと試みる彼らの姿が思い浮かばれる。こうして聴いて
みると、やっぱり自分は初期のいい意味で直情でストレートなアジカンが好きなんだなぁ…と思
ってしまう。ことにアジカンのような変化を求めるバンドに以前のスタンスを追い求めること自体
が間違ってるとはわかっているんだけれども、やはり叶月の中では冒頭を飾る「エントランス」が
アルバム内でも燦然と輝いている、そんな一枚だったりする。(2007/6/27)
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