ALBUM REVIEW



ACIDMAN

TITLE  酸化空 
Released  2002.3.6
SINGLES  (なし)
Evaluation  ★★★★★★★★☆☆
 インディーズ時代のミニアルバム…らしいです。1050円という値段と5曲という微妙な曲数か
ら、ずーっとシングルだと思い込んでましたが…(死
 「創」収録の「8to1 completed」のオリジン「8 to 1」、恐らく「創」収録と同バージョンの
SILENCE」、「Loop」収録の「今、透明か」のオリジンの「今、透明か」など、伏線傾向の強い
曲目が並んでおります。インディーズとはいえ、この約5ヶ月後にはプレビューディスクによるメ
ジャーデビューを果たしているので、デビューアルバム「創」に通じる音楽性や、大木さんの哲
学的な詞の世界観はすでにこのミニアルバムの段階では完成しています。
 ファンの間でもフェイバリットの分かれるこの作品ですが、叶月がこのアルバムで紹介したい
のは何と言っても5曲目の「FREE WHITE」。「J-POP曲の中でただ一つに、『ヤバい』という表
現を採用するとしたらどの曲を挙げる?」と聞かれたら、叶月は間違いなくこの曲を推します。
「疾走感」というものを超えた、文字通りの「超疾走感」。かと思いきや、はっと息を呑む瞬間も
あり。言うなれば「静と動の魔術師」ACIDMANの真骨頂ここにありき。
このアルバム内ならず、ACIDMAN作品の中でもダントツでお気に入りの曲です。
このレビュー書く今の今までずっとシングルだと思ってたので、アルバム全体としての印象と
いうものがないのですが(死)、「FREE WHITE」のためだけにこのアルバムを買っても全く損は
ないかと。ていうか、買うべきだ。この値段だし。
 「FREE WHITE」のことばかりでアレなんですが、インディーズ版のみのもう一つの楽曲である
表題曲「酸化空」も結構好きです。「アカシアの下で 滅ぶ獣達 後に咲く花もなく」「正しさに
 今、乱されそう
」といった歌詞が痛く、やるせなく、そして心地よい。(2005/3/13)
TITLE  創 
Released  2002.10.30
SINGLES  「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」
Evaluation  ★★★★★★★★★☆
 プレビューディスク3作連続リリースの後にリリースされたメジャー1stアルバム。…今にして
思えば姑息な手段であるような気がしないでもない(苦笑
自分は「アレグロ」でアシの存在を知り、「赤橙」でそのメロディーセンスに惚れてアルバムを
購入してみました。
当初、「赤橙」の美しくも儚いメロディーを聴いて「メロディー重視のソフトなギターバンドなんだ
」と勘違いをした叶月は、箱を開けてみると意外にロックしていた彼らに初めの頃は正直一
杯食わされた気がしましたが(爆)、すぐにその独特の世界観に虜になりました。
 個人的にはこの作品、1stにして最高傑作だと考えています。
かく言う所以は、他の作品に比べても聴きやすさを感じるため。インストを除くボーカル曲はど
れもクオリティーが高く、ジャケットが示すようなマイナー調の演奏、どこか哲学的な大木氏の
書く詞との相性もよく、全体として実に調和のとれた作品になっています。また、それらのボー
カル曲自体が旋律重視の「歌モノ」であることも大きなポイント。これ以降の作品ではより一層
ユニークでアーティスティックな作品へ、つまり「聴いて楽しい、歌って爽快」な曲から「芸術作
品として鑑賞することで趣を得る」ような楽曲へと深化していくので…。かいつまんで言えば、
ACIDMANの唯一無二の「独創性」と、コアなリスナーでない人にも受け入れられる「ポップさ」
が最も絶妙なバランスで釣り合っているアルバムなワケです。
それじゃあ、ボーカル曲ばっかが取り柄のアルバムなのかというとまたこれがそうでもなく。綿
密な音作りにかけても彼らのサウンドは一品で、「at」では音を紡ぎ出すかのような繊細なイン
ストを聴かせてくれます。
 そういった理由から、彼らの作品の中では比較的肩の力を抜いて聴ける一枚と思っていま
す。捨て曲は基本的にないと思っていますが、オススメを挙げておくと、荒々しいサウンドにも
の悲しいリリックをのせた「シンプルストーリー」と、とにかく詩の内容に励まされる万人への応
援歌「Your Song」。それと忘れちゃならない、叶月をACIDMANの音楽の世界へと誘ってくれ
た「赤橙」。やっぱいつになっても特別なのです、この曲は。(2005/3/14)
TITLE  Loop 
Released  2003.8.6
SINGLES  「飛光」「Slow View」「リピート」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 1st「創」より、1年たたぬ内に発売された2nd。…1年以内のアルバム発売って、個人的には
ターム早い方だと思うんだけど、どうでしょうか。1曲目の「type-A」の轟音ギター・疾走ドラム
に速効でKOされ「あぁ、これはもう買いだな」と思い、フラゲしたアルバムです。
 良メロが印象的だった「創」と比較するとインストゥルメント主体のサウンドになってます。特
にシングル曲以外のアルバム曲では、歌が演奏に付随する傾向が強い。ん〜、やっぱり前作
に比べると聴きごたえが少々減といった感じ。
 一言言わせてもらうとこのアルバム、構成にいささか難点があります。第一に、シングル曲
が総じてアルバムの前半に収録されていること。この傾向は前作にも見られるが、今作は作
風自体があまりキャッチーではないので、後半のアルバム曲(特に7〜9曲目)は彼らの新境
地開拓の試行錯誤の跡とも言うべき実験的な楽曲、言ってしまえば無機質な楽曲が並んで
いる。ひいては全体的に「頭でっかち」な印象が残ってしまうのであります。
もう一つに、トリプルA面シングル「Slow View」に収められている秀曲「静かなる嘘と調和」がこ
のアルバムでは省かれているということ。コレってどうなんですかね…シングルの置石として
アルバム未収録曲をシングルに忍ばせておくという手段はよくあるテですが、「静かなる〜」
はA面曲ですよ?置石を残すつもりなら「リピート」のB面曲「波、白く」でも…(マテ まぁ彼らに
限って、「シングルも買ってもらえるように…」という商業的な計算高さはないと思うけど…
 このような問題点はあるものの、「創」で早々に(韻踏んでるワケじゃないですよ/爆)アルバムアーティ
ストとしての地位を確立しながらも、その大衆化の波に煽られることなく独自の音を開拓し続
けるその姿勢からは、彼らの音への貪欲さ・真摯さを感じ取ることができる。アルバム全体の
聴きやすさとかはさておいて、そういう点で好感の持てるアルバムだ、と思うのはアーティスト
愛の域を出ていないだろうか(^^;)とにもかくにも、ACIDMANの音楽性の推移を見る上で抜き
に出来ない作品。(2005/3/13)
TITLE  equal 
Released  2004.9.15
SINGLES  「水写」「彩 -SAI- (前編)」「イコール」
Evaluation  ★★★★★★☆☆☆☆
 重い。とにかく重い。ACIDMANの3rdアルバムは、「重い」の一言に尽きる。
それもそのはず、CDの帯には「あらゆる色の生命をイコールで繋ぐ」のキャッチコピーが。
今、自分が対峙しているこのディスクの中で彼らはかくも壮大なるテーマを掲げ、その難儀を
成し遂げようとしているのである。
 …とまぁ、やたらにシリアス気取ってますけど(爆)、本当にコレは今までの作品のスケール
とはワケが違いますよ。作品を聴けば「やっべ、カッコよくない??ACIDMANマジやべー!!」とか
いう軽い気持ちを通り過ぎて「……………(;゜д゜)」となること請け合い。(ぇ もはや彼らは単な
るバンドではなく、ひとつの世界そのものになっちゃってます。
 ACIDMANといえば、とりわけ「静と動の共存」が物を言うサウンド。今作もそのコントラストが
絶妙に活かされていますが、そんな「静と動」の如何に関わらず、アルバムを通してある一定
の緊張感で満たされています。例えば同じ「静」の曲をとってみても、前作「Loop」の一曲「リ
ピート」のような穏やかな静けさとは全く違う。
 先に述べた威圧感を一際覚えたのはラストトラックの「廻る、巡る、その核へ」。
cps」の一本のギターから紡がれるささやかな音で幕を開け、10分にわたって緩やかに激し
さを増し、ただならぬ威圧感のうちに幕を閉じるその展開はまさに、ひとつの生命がやがてあ
らゆる色の生命とイコールで繋がっていくというこの作品のコンセプトの集大成に他ならない。
「凄ぇ、ここまで来ちゃったかACIDMAN… (;゜д゜)ポカーン」と思わされる超大作であり、感動作。
それにしても、このアルバムの2ヶ月弱前に発売されたディズニー音楽コンピレーションアルバ
ム「MOSH PIT ON DISNEY」の一曲として収められていた9曲目「colors of the wind」も、振り
返ってみれば紛れもないこのアルバムの伏線だったワケだ…恐るべし、ACIDMAN。。
 ただし、そのサウンドの向かうベクトルとは裏腹に、メロディーの方は意外にも演奏の付加的
な要素に成り下がる(…と言っちゃ何だけど)ことなく、「歌」として成り立っています。そういう
意味では前作よりも聴きやすい作品ではある。
 で、結局叶月にとってこのアルバムはどうであったかというと…やはり「重い」です(苦笑)。
特に「降る秋」は狂おしすぎてよほど気分のいい時でも聴けません(^^;) 上に書き連ねたレ
ビューを読んで、叶月がこの作品を駄作と思ってないことはおわかり頂けるでしょうが、必ずし
も友人に気軽にお薦めできる作品では…。聴き手を選別するアルバムでもあるワケですね。
 さて、3rdにして彼らは、かつていかなるバンドも臨むことのなかった領域に踏み入ってしまっ
た。次なるACIDMANの行く先は果たして?その答えはもはや知る由もない。(2005/3/12)
TITLE  and world
Released  2005.12.7
SINGLES  「ある証明」「季節の灯」「world symphony」
Evaluation  ★★★★★★★☆☆☆
 「equal」で前人未到の領域に到達してしまったACIDMAN。ここまで完成した作品創っちゃっ
て、次どこへ行くつもりなんだろう、とさえ思っていた。そんな中、彼らはアルバムの先行シン
グルとして「REST & ACT」なるお得意のコンセプトのもとシングルをリリース。第一弾シングル
季節の灯」(REST)ではストリングスやアコギを前面に押し出した「新境地」を、対照に第二
弾「world symphony」(ACT)では直球も直球のACIDMAN流疾走ロックを展開。この2つのシン
グル曲は静と動という観点では対照的なものの、実は共通したコンセプトに根付いていた。実
験的なサウンドに傾倒した「Loop」やその延長にあった「equal」と比較すると、これらのシング
ル曲は明らかにメロディーが立って聴こえる。思えば、「equal」発売以降初のシングル「ある証
」でも比較的メロディーに主体性があった。そして、「REST & ACT」の後にリリースされた3
ヶ月連続リリースの第3弾ことこの4thアルバム「and world」は、先行シングル3作の音から想
像するに難くないポップな作風となっていた。その点では1st「」に近い一枚であると思える。
 「River」「プラタナス」がこのアルバムのポップ感へのシフトを最もよく表した曲だと思う。特に
後者は今までのACIDMANにはない肩の力の抜けたムードが漂っている。激しいACIDMANも
悪くないけど、こういうリラックスした雰囲気のACIDMANが好きです。歌詞の方を見てみると、
hello」というごくなじみの深い言葉が見られたり(「銀河の街」「stay on land」)や「it's up to
you
(君次第だ)」(プラタナス)と語りかけるシーンもあったりで親しみやすい。ラストの表題曲
and world」ではアコギ一本によるアウトロにより〆られるが、「あれ、どっかで聴いたなコレ」
と思えば冒頭の「introduction」と同様のものだったりする。「Loop」や「リピート」といった彼ら
が好むコンセプトの実践だろうか、聴き終えた後にこれまでにはなかった余韻と感動の残るア
ルバムだ。
 とはいえ、これが原点回帰なのかといえば、そうでもないかもしれない。アルバム全体の構
成美は「Loop」「equal」での実験的アプローチから得られたものだろうし、逆に「創」がそれらの
「実験」以前の作品であることを考えると、今作は「創」よりも取捨選択の余地のある上で選択
されたポップさであるように感じる。今回このような作風を選んだ動機は知らないけれど、前3
作の中では「創」が一番好きな自分としては嬉しい選択であった。ただ、それでも独自の音へ
の追求に貪欲な彼らゆえ、徹底的に洗練されたサウンドはメロディーがポップであろうとどうし
ても高尚に響いてしまうのが皮肉なところなのだが… 初めてACIDMANの作品に入るという
人には、今のところこの作品が最もおすすめできることには間違いない。(2006/2/12)
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